プラセンタ注射は、美容クリニックや内科でも取り扱いのある、比較的身近な注射です。1回あたりの費用が抑えられることから、定期的に通っているという方も少なくありません。
ただし、この注射には受ける前に必ず知っておくべき点があります。それはヒト胎盤由来のプラセンタ注射を1回でも受けると、現在の取り扱いでは献血ができなくなるということです。骨髄バンクへの登録や臓器提供にも影響します。なお、この献血制限については見直しの方針が示されており、後ほど詳しく触れます。料金や効果の説明は熱心でも、この点の説明が簡単に済まされてしまうケースがあるため、この記事では最初にまとめて解説します。

★最重要★ プラセンタ注射と献血・骨髄提供・臓器提供の制限
ヒト胎盤由来のプラセンタ製剤を注射で使用した方は、献血を遠慮していただく対象とされています。これは日本赤十字社が定めている取り扱いで、厚生労働省の方針に基づくものです。現在のところ期間の定めはなく、一度使用すると献血ができない状態が続きます。
この制限には見直しの方針が示されています
ただし、この取り扱いは今後変わる見込みです。厚生労働省は令和8年2月に、プラセンタ注射剤の使用歴に関する献血制限を見直す方針を公表しました。「投与後3か月延期」という、他の特定生物由来製品と同じ扱いに改められる予定です。つまり、最後の注射から3か月が経過すれば献血できるようになる、という内容です。
実施時期は令和8年秋頃が予定とされています。日本赤十字社側の問診システムの改修や周知にかかる期間を見込んだスケジュールで、この記事の執筆時点ではまだ切り替わっていません。詳しい内容は厚生労働省「欧州等滞在歴及びヒト胎盤エキス(プラセンタ)注射剤使用歴に係る献血制限の見直しについてのQ&A」で公開されています。
見直しの方針が示されたとはいえ、切り替えの前後で扱いが変わります。実際に献血できるかどうかは、そのときの運用によって決まります。受ける前に、日本赤十字社の窓口や献血ルームで最新の取り扱いを確認してください。また、後述する骨髄提供・臓器提供の扱いは、この献血制限の見直しとは別の話です。
なぜ制限されているのか
理由は、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)の感染リスクを理論上否定できないためです。プラセンタ注射によってvCJDに感染したという報告はこれまでありません。それでも、vCJDは輸血の際の検査で調べる方法が現時点で確立しておらず、未解明な部分が残っています。そのため、安全側に立った予防的な措置として制限が設けられました。この取り扱いは厚生労働省の血液事業に関するページでも案内されている内容に沿ったものです。
制限の範囲
- 対象になる:ヒト胎盤由来のプラセンタ製剤の注射(ラエンネック、メルスモンなど)
- 対象にならない:健康食品・サプリメント・ドリンク剤、化粧品、内服薬
つまり、飲むタイプや塗るタイプのプラセンタ製品は献血制限の対象外です。制限されるのは注射だけという点は、混同されやすいので押さえておいてください。
献血以外への影響
影響は献血だけにとどまりません。
- 骨髄バンクのドナー登録:日本骨髄バンクは、ヒト由来の臓器から製造されたプラセンタを使用した方のドナー登録を遠慮いただく扱いとしています。理由は献血と同じく、vCJDの理論上のリスクです。すでに登録している方は、日本骨髄バンクへ申告して扱いを確認してください。
- 臓器提供:ヒト胎盤エキス注射剤の使用歴がある方からの臓器提供は、原則として見合わせることとされています。ただし、移植を受ける側がvCJDの感染リスクと移植後の留意点について医師から説明を受けたうえで、それでも提供を受ける意思を示している場合は、この限りではないという例外が設けられています。
献血や骨髄提供の扱いは日本赤十字社のヒト胎盤(プラセンタ)由来製剤についての案内や日本骨髄バンクのドナー登録に関するQ&Aで確認できます。
献血を定期的に続けている方、将来的にドナー登録を考えている方にとっては、これは無視できない判断材料です。献血については上記のとおり見直しが予定されていますが、骨髄提供や臓器提供の扱いは現時点で変更が示されていません。注射を受けたという事実自体は取り消せないため、迷っている段階では急がないほうがよいでしょう。
確認した取り扱いや医師から聞いた説明は、ノートに整理しておくと落ち着いて判断しやすくなります。

プラセンタ注射とはどんな注射か
プラセンタとは胎盤のことです。医療用のプラセンタ注射剤は、ヒトの胎盤から抽出した成分を有効成分とする医薬品で、国内では主に2つの製剤が使われています。
| 製剤 | 承認されている効能・効果 |
|---|---|
| メルスモン | 更年期障害、乳汁分泌不全 |
| ラエンネック | 慢性肝疾患における肝機能の改善 |
ここで重要なのは、美容目的での使用は、国が承認した効能・効果の範囲外だという点です。美容や疲労回復を目的として使う場合は、保険が使えない自由診療となり、医師の判断による使用ということになります。
肌のことを気にして受ける方が多い注射ですが、「肌がきれいになる」という効能で承認されているわけではない、という位置づけを理解しておいてください。医薬品の承認内容はPMDA(医薬品医療機器総合機構)のサイトで確認できます。
保険が使えるケースと使えないケース
保険適用になる場合
メルスモンは更年期障害に対して、ラエンネックは慢性肝疾患における肝機能の改善に対して、それぞれ保険が適用されます。ただし、メルスモンは肝機能に対しては適用外、ラエンネックは更年期障害には適用外という組み合わせになっている点に注意が必要です。
更年期障害での適用については、対象となる年代や症状の条件が設けられており、医療機関によって案内が異なることがあります。受診前に電話などで確認しておくとスムーズです。
費用の目安
保険が適用される場合、初診時は初診料などを含めて1,000円台、再診時は1アンプルの注射で500円程度が目安として案内されることが多いようです。
一方、美容や疲労回復を目的とした自由診療では、1アンプルあたり1,000円から2,000円程度という価格帯が多く見られます。美容目的では1回に2アンプル程度を使う案内が多いため、1回あたりの支払いはその倍程度を見ておくとよいでしょう。回数券やコースを設定しているクリニックもありますが、契約前に有効期限と解約条件を確認してください。
なお、料金はクリニックによって幅があります。実際の金額は各医療機関の公式サイトや窓口で確認してください。

どのくらいの頻度で受けるのか
頻度についても医療機関の方針によって差があります。最初のうちは週に1〜2回程度から始め、様子を見ながら間隔をあけていく、という案内がなされることが多いようです。
ここで気をつけたいのが、通院の負担です。週に1回クリニックへ通うのは、仕事や家事の合間だとかなりの手間になります。通いやすい場所か、待ち時間はどのくらいか、予約が取りやすいかは、続けられるかどうかを左右する現実的なポイントです。
通院の予定は手帳にまとめておくと、予約の間隔や次回の日程を管理しやすくなります。
注射・サプリメント・化粧品はどう違うか
プラセンタという言葉は、注射だけでなくサプリメントや化粧品にも使われています。同じ名前でも中身と扱いはまったく異なるため、整理しておきましょう。
| 種類 | 原料 | 分類 | 献血制限 |
|---|---|---|---|
| 注射剤 | ヒト胎盤 | 医療用医薬品 | 対象になる |
| サプリメント | 主に豚・馬の胎盤 | 食品 | 対象外 |
| 化粧品 | 主に豚・馬・植物由来 | 化粧品 | 対象外 |
市販されているサプリメントや化粧品の多くは、ヒト由来ではなく動物由来や植物由来の原料を使っています。原料が違えば、体への入り方も法律上の扱いも変わります。「注射は抵抗があるからサプリで」と考える方もいますが、そもそも別のものだという前提で選んでください。
サプリメントを検討する場合は、原料の由来と含有量が表示されているか、製造工程の管理体制が公開されているかを確認するとよいでしょう。錠剤タイプ、ドリンクタイプ、粉末タイプなど形状もさまざまなので、続けやすい形を選ぶのが現実的です。
副作用とリスク
注射である以上、次のような反応が起こる可能性があります。
- 注射部位の痛み、赤み、腫れ、内出血
- 発疹、かゆみなどの過敏症
- まれにショック、アナフィラキシー
- 注射部位の硬結(皮下注射の場合)
- まれに肝機能値の変動
また、皮下注射を繰り返すと同じ部位に負担がかかるため、注射する場所を変えながら行われます。体調が優れない日や発熱時は見送るなど、その日の状態に応じた判断も必要です。気になる症状が出た場合は、次回の予約を待たずに医療機関へ連絡してください。

受けたあとの過ごし方と備え
注射後は、当日の激しい運動や飲酒を控えるよう案内されることがあります。注射部位を強くもむのも避けてください。入浴については問題ないとされることが多いものの、当日は長湯を避けるのが無難です。
皮下注射の場合、注射部位に内出血が出ることがあります。腕に打つことが多いため、半袖の季節は気になるという声もあります。肌色を補正するタイプのボディ用コンシーラーや、薄手のアームカバーを用意しておくと外出時に困りません。注射のあとに貼る絆創膏がかぶれやすい方は、低刺激タイプのサージカルテープを持参するという方法もあります。
また、通院を続けるのであれば、記録を残しておくと役に立ちます。日付、使用した製剤名、アンプル数、体調の変化をメモしておけば、医師に相談するときの材料になります。手帳でもスマートフォンのメモでも構いません。
プラセンタ注射に関するQ&A
Q.一度でも打つと本当に一生献血できないのですか
これまでは期間の定めがなく、一度使用すると献血できない扱いが続いていました。ただし厚生労働省が令和8年2月に見直しの方針を示しており、「投与後3か月延期」に改められる予定です。実施は令和8年秋頃が予定とされています。切り替えの時期や運用は日本赤十字社の案内で確認してください。なお、骨髄提供と臓器提供の制限については、この見直しに含まれていません。
Q.サプリのプラセンタでも献血できなくなりますか
健康食品、ドリンク剤、化粧品、内服薬は対象外です。制限されるのは注射剤のみです。
Q.効果はどのくらいで感じられますか
感じ方には個人差があり、美容目的での使用は承認された効能ではないため、確立した基準はありません。医療機関で説明を受ける際は、断定的な表現ではなく、可能性として説明されているかどうかを聞き分けてください。
Q.他の注射や点滴と一緒に受けられますか
ビタミン注射などと組み合わせて案内されることがあります。ただし同日に複数を行うと、体調の変化が何によるものか分かりにくくなります。まずは単独で様子を見るという進め方も検討してください。
Q.妊娠中や授乳中でも受けられますか
妊娠中・授乳中の方への使用については慎重な判断が必要です。持病がある方、服用中の薬がある方も含めて、診察時に必ず申告してください。
Q.保険で受けられるか自分で判断できますか
症状と年代、使用する製剤の組み合わせによって決まるため、自己判断は難しいところです。受診時に医師へ相談してください。美容目的で受けたい場合に保険を使うことはできません。
Q.やめたら元に戻りますか
継続をやめたことで、それ以前より状態が悪くなるという性質のものではありません。加齢による変化は続いていくため、そのように感じられることはあるかもしれません。
まとめ
プラセンタ注射は、保険が使える場合には1回500円程度、自由診療でも1アンプル1,000円から2,000円程度と、比較的取り入れやすい価格帯の注射です。ただし美容目的での使用は、国が承認した効能・効果の範囲外であるという点は理解しておく必要があります。
そして何より、ヒト胎盤由来の注射を受けると、献血・骨髄提供・臓器提供に制限がかかるという点が、この施術の最大の判断ポイントです。感染の報告があるわけではなく、あくまで予防的な措置です。
このうち献血については、「投与後3か月延期」への見直しが令和8年秋頃に実施される予定で、恒久的な制限ではなくなる見込みです。一方、骨髄バンクのドナー登録と臓器提供の扱いには、現時点で変更が示されていません。
献血を続けたい方、ドナー登録を考えている方は、最新の取り扱いを日本赤十字社や日本骨髄バンクで確認したうえで検討してください。判断に迷う場合は、医師の診察を受けて、目的に合った他の選択肢がないかもあわせて相談してみることをおすすめします。


