「写真で笑ったときに、目尻の線がくっきり出るようになった」「メイクをすると、その線にファンデーションがたまってしまう」「無表情のときは気にならないのに、笑うと一気に年齢が出る気がする」。目元の表情の線は、鏡よりも写真で気づかされることが多いものです。
この笑いジワ、いわゆる「カラスの足跡」に対して行われているのが目尻ボトックスです。目尻の外側にある筋肉のはたらきを一時的に和らげ、表情によって寄る線を目立ちにくくすることを目指す施術になります。
目尻ボトックスには、この記事で扱う他の部位と違う特徴があります。目尻の表情皺は、国内で承認された効能・効果に含まれている数少ない美容目的の適応です。この点は、施術を検討するうえで押さえておく価値があります。
この記事では、目尻ボトックスの仕組み、費用の目安、持続期間、そして打ちすぎたときに何が起こるのかというリスク面まで整理して解説します。

目尻ボトックスはどういう施術なのか
目の周りには、まぶたを閉じたり細めたりするための眼輪筋(がんりんきん)という輪状の筋肉があります。笑ったり目を細めたりするたびにこの筋肉が縮み、外側の皮膚が放射状に寄ります。これが目尻の線として現れます。
目尻ボトックスでは、眼輪筋の外側部分にボツリヌス毒素製剤を少量ずつ注射します。神経から筋肉への信号が伝わりにくくなることで収縮が和らぎ、表情によって寄る線が目立ちにくくなることを目指します。
表情でできる線と、刻まれた線は分けて考える
ここは期待値を大きく左右する部分です。
- 表情によって現れる線:笑ったときだけ出て、真顔に戻ると消える。この施術が主に対象としているのはこちらです
- 常に刻まれている線:無表情でも残っている。皮膚そのものの変化が進んでいる状態で、筋肉の動きを抑えるだけでは変化が限られます
後者に対しては、別のアプローチが検討されたり、組み合わせが提案されたりします。自分の目尻の線がどちらの性質なのかは、鏡の前で無表情のときと笑ったときを見比べると、おおよその見当がつきます。
表情の線が中心なのか、皮膚に刻まれた線が中心なのかで、向いている方法が変わります。診察の場で「あなたの目尻はこの性質だから、この施術ではここまでを目指せる」という説明があるかどうかは、判断材料の一つになります。
日常のケアでできること
目元の線が気になり始めると、コンシーラーを重ねてかえって目立ってしまう、という経験をされる方は少なくありません。朝の身支度で毎回そこに時間を取られるのは、地味に負担の大きいことです。
日常のケアとしては、目元用のアイクリームや目元専用のシートマスクを取り入れる方が多くいます。目の疲れが気になるときには蒸気で温めるホットアイマスクを使う方もいます。また、目を細める動作そのものを減らすという観点から、屋外でのUVカット機能のあるサングラスや、日常的な顔用の日焼け止めも、目元への負担を減らす方向のケアとして挙げられます。
こうしたケアを続けても表情の線が気になる、という段階で、医療機関での施術が選択肢に入ってきます。

国内承認の適応に含まれる部位
美容目的で用いられるボツリヌス毒素製剤の国内承認内容は、部位が明確に限定されています。
| 部位 | 国内承認の有無 |
|---|---|
| 眉間の表情皺 | 承認された効能・効果に含まれる |
| 目尻の表情皺 | 承認された効能・効果に含まれる |
| 額、口元、あご、エラ、首、肩 など | 含まれない(適応外使用となる) |
目尻は、この短いリストに入っている部位です。なお、国内承認の対象は65歳未満の成人とされています。また、承認されているからといって保険が使えるわけではなく、美容目的である以上、全額自己負担の自由診療である点は変わりません。
また、クリニックによっては国内承認品ではない海外製の製剤を使用している場合があります。その場合は国内未承認の医薬品を用いることになるため、どの製剤を使うのかはカウンセリングで確認しておきたいところです。各製剤の承認内容はPMDA(医薬品医療機器総合機構)の医療用医薬品情報検索で調べられます。
効果の出方と持続期間
目尻ボトックスは、注射したその場で変化が出るものではありません。
| 時期 | 一般的に言われている経過 |
|---|---|
| 2〜3日ごろ | 表情の動きに変化を感じ始める方が出てくる |
| 1〜2週間ごろ | 作用が安定してくる時期とされる |
| 3〜4か月ごろ | 徐々に作用が薄れ、元の状態に戻っていく |
目元は皮膚が薄く、筋肉も繊細なため、他の部位に比べて持続がやや短めになる傾向があると説明されることが多い部位です。持続期間には幅があり、効果には個人差があります。
そして重要な点として、作用は永続せず、状態を保ちたい場合は繰り返しの施術が必要になります。一度で完了する処置ではないため、続けるかどうかを含めて費用を考えておく必要があります。
費用の目安と単位数の考え方
目尻ボトックスは自由診療のため、料金は各クリニックが独自に設定します。両目尻で1万円台から2万円台という設定が見られる一方、使用する製剤によってはこれより低い設定も高い設定もあり、金額には幅があります。実際の料金は各クリニックの公式情報で確認してください。
単位数の目安
国内承認品の添付文書では、目尻の表情皺に対して両側で合計12〜24単位を、左右の眼輪筋の外側に各3か所(合計6か所)へ分けて注射する用法・用量が定められています。1回の投与量の上限は合計24単位です。ふくらはぎや肩のように大きな筋肉ではないため、必要な単位は少なめです。
実際に何単位入れるかは、表情の癖や筋肉の強さを診たうえで、この範囲のなかで医師が調整します。海外製の製剤を用いる場合は単位の換算が異なることがあるため、製剤名とあわせて確認してください。
ただし、単位数は「多いほど良い」というものではありません。目元は入れすぎたときの影響が表情に直結する部位です。笑ったときの目元の動きが乏しくなる、表情が硬く見える、といった状態は、量の調整で避けたいところです。
料金差が生まれる理由
- 製剤の種類:国内承認品を使うか、海外製の製剤を使うかで金額が変わります
- 単位数:単位ごとの課金か、部位ごとの定額かで表示方法が異なります
- 診察料・薬剤料の扱い:総額に含まれるか、別建てかで実際の支払額が変わります
- 初回価格の設定:初回のみの価格が表示されていることがあり、2回目以降の金額は別に確認が必要です
料金だけを比べて選ぶと、製剤の違いや単位数の違いが見えなくなります。「どの製剤を、何単位、いくらで」という三点をそろえて比べないと、同じ条件の比較にはなりません。
複数のクリニックで聞いた製剤名・単位数・金額は、小さめのノートに同じ書式で書き留めておくと比べやすくなります。

リスクと副作用
目元は顔の印象を大きく左右する部位です。良い面だけでなく、起こりうることを理解したうえで判断してください。
表情に関するもの
- 表情の不自然さ:入れすぎると、笑ったときの目元の動きが乏しくなり、表情が硬い印象になることがあります
- 左右差:注入の位置や量のわずかな違いで、左右の目元の動きに差が出ることがあります
- 目の下の変化:目尻の筋肉の動きが抑えられることで、下まぶたの張りが変わり、かえって別の部分の線が気になると感じる方がいます
- まぶたが下がる:注入位置が目に近すぎた場合など、まぶたが重く感じられることがあります
これらは薬剤の作用が薄れるとともに戻っていくものですが、数か月は付き合うことになります。人前に出る予定が控えている時期は避ける、という判断も現実的です。
注射そのものに伴うもの
- 注射部位の内出血、赤み、腫れ、痛み。目元は皮膚が薄く血管も細かいため、内出血が出やすい部位です
- 頭痛や目の周りの違和感
- まれに、薬剤に対するアレルギー反応
妊娠中および授乳中の方は、ボツリヌス毒素製剤の注射を受けることができません。妊娠の可能性がある方、妊娠を希望されている方は必ず事前に医師へ伝えてください。全身性の神経筋接合部の疾患がある方、注射部位に感染や炎症がある方、製剤の成分にアレルギーのある方も対象外です。最終的な可否は、医師の診察を受けたうえで判断されます。
クリニックを選ぶときの観点
特定の医療機関を挙げることはしませんが、確認したい観点はまとめられます。
1. 使用する製剤を明示しているか
国内承認品か、海外製の製剤か。海外製の場合、国内未承認の医薬品を用いることになります。製剤名を明示せず「ボトックス」とだけ案内しているところは、カウンセリングで直接確認してください。
2. 目元の動きを見たうえで提案しているか
実際に笑ってもらう、目を閉じてもらうといった動作を確認せずに単位数を決めるのは、目元では避けたい進め方です。表情の癖は人によって違います。
3. 打ちすぎのリスクを説明しているか
「たくさん入れた方が効く」という説明ではなく、量の調整の重要性に触れているかどうか。ここは施術者の姿勢が出るところです。
4. 経過を見る機会があるか
作用が出そろう2週間ごろに診察の機会があるか、微調整に対応しているか、その場合の費用はどうなるか。この体制の有無は事前に確認しておきましょう。
美容医療の相談先を探す際は、日本美容外科学会(JSAPS)のように専門医制度を設けている学術団体の情報も参考になります。
よくある質問
Q. 施術当日にメイクはできますか
注射直後のメイクについては、医療機関ごとに案内が異なります。当日は控えるよう伝えられることもあれば、時間をおけば可能とされることもあります。予約時に確認しておくと予定が立てやすくなります。
Q. 内出血が出たらどのくらいで治まりますか
内出血の程度には個人差がありますが、目元は皮膚が薄いため出た場合は目立ちやすい部位です。おおむね1〜2週間で目立たなくなっていくとされています。大事な予定の直前は避けておくのが無難です。
内出血が気になる期間の外出には、オレンジ系のコンシーラーでカバーする方もいます。メイクを再開してよい時期は、クリニックの指示に従ってください。
Q. 眉間と一緒に受けられますか
眉間も国内承認の適応に含まれる部位のため、同時に相談されることの多い組み合わせです。ただし全体のバランスがあるため、どこにどれだけ入れるかは診察のうえで判断されます。
Q. やめたらシワが増えますか
やめたことで悪化するという性質のものではありません。薬剤の作用が薄れれば筋肉の動きが戻り、表情の線も施術前の状態に近づいていきます。
Q. 何回か受けると効きにくくなりますか
繰り返すうちに変化を感じにくくなったという声があることは知られています。間隔や量については、担当医と相談しながら決めていくことになります。短い間隔での繰り返しは推奨されていません。
Q. 若いうちから受ける意味はありますか
表情の癖によって線が定着していく前に、という考え方が語られることはあります。ただし必要性は個人の状態によって異なり、誰にでも当てはまるものではありません。診察のうえで判断してください。
Q. 施術後に気をつけることはありますか
当日の激しい運動、飲酒、長時間の入浴、注射部位を強くこすることは避けるよう案内されるのが一般的です。詳細は施術を受けた医療機関の指示に従ってください。

まとめ
- 目尻ボトックスは眼輪筋の外側にはたらきかけ、表情によって寄る線を目立ちにくくすることを目指す施術
- 目尻の表情皺は、眉間とともに国内で承認された効能・効果に含まれる数少ない美容目的の適応
- ただし美容目的である以上、保険は使えず全額自己負担の自由診療となる
- 作用は2〜3日後から現れ、持続は3〜4か月程度。維持には繰り返しの施術が必要
- 国内承認品の用法・用量は両側で合計12〜24単位(上限24単位)。多く入れれば良いというものではない
- 表情の硬さ、左右差、内出血、まぶたの重さといったリスクがある
- 妊娠中・授乳中の方は受けられない
目元は、少しの変化が印象を大きく変える部位です。だからこそ、価格の安さだけで決めるのではなく、自分の表情の癖を診たうえで量を調整してくれるかどうかを見てください。最終的な判断は、医師の診察を受けたうえで行うことをおすすめします。


