ヒアルロン酸注入は、美容医療の中でも受ける方が多い施術です。それだけにクリニックの数も多く、料金の幅も大きいため、「どこで受ければいいのか分からない」という声をよく聞きます。
広告では「1cc◯◯円」という価格が前面に出ますが、同じ1ccでも使う製剤も注入の設計もまったく違います。価格だけを横並びにしても比較にならないというのが、この施術の難しいところです。
この記事では、ヒアルロン酸注入の料金がどう決まるのか、相場としてどのくらいを見ておけばよいのか、そしてクリニックを選ぶときに何を確認すればよいのかを整理しました。特定のクリニックを挙げて勧めることはしません。判断の基準をお渡しする内容です。

ヒアルロン酸注入の料金の目安
ヒアルロン酸注入の料金はクリニックによって幅があり、1ccあたりおよそ3万円台から10万円程度という設定が多く見られます。使う製剤の種類によって単価が変わり、目安としては次のような傾向があります。
| 製剤の系統 | 1ccあたりの価格帯の目安 | 持続期間の目安 |
|---|---|---|
| 国内承認の主要シリーズ(硬めのタイプ) | 6万円〜9万円程度 | おおむね6〜18か月 |
| 国内承認の主要シリーズ(柔らかめのタイプ) | 4万円台〜 | おおむね6〜12か月 |
| 粘度の低いタイプ | 6万円〜8万円程度 | おおむね3〜12か月 |
| 海外製の未承認製剤 | 1万円台〜と幅が広い | 製剤により大きく異なる |
これはあくまで一般的に見られる価格帯であり、地域やクリニックの方針によって上下します。実際の料金は各クリニックの公式サイトで確認してください。
部位ごとに必要な量が変わる
総額は「単価 × 必要な量」で決まります。必要量は部位と目的によって変わり、ほうれい線や涙袋などの細かい部位は少量で済む一方、こめかみや頬などの広い面をふっくらさせたい場合はまとまった量が必要になります。
そのため、1ccの単価が安いクリニックが、総額でも安いとは限りません。カウンセリングでは「何ccを、どこに、どの製剤で」入れる想定なのかを聞き、その前提で総額を出してもらいましょう。
- 広告の「1cc◯◯円」は最も安い製剤の価格であることがある
- 必要量は診察してみないと確定しない
- 麻酔代・診察料・薬代が別途かかる場合がある
- 持続期間が短い製剤は、年間で見ると割高になることもある
各クリニックで聞いた製剤名・注入量・総額は、小さめのノートに同じ項目で書き留めておくと比較しやすくなります。
国内承認の製剤と未承認の製剤
ヒアルロン酸注入剤のうち、国内で薬機法上の承認を受けているのは、アラガン社のジュビダームビスタシリーズと、ガルデルマ社のレスチレンシリーズです。これら以外にも数多くの製剤が国内のクリニックで使われていますが、それらは医師の責任のもとで輸入された未承認の製剤という位置づけになります。
未承認の製剤を使うこと自体が問題というわけではありませんが、次の点は理解しておく必要があります。
- 未承認である旨、入手経路、国内承認品の有無、諸外国での安全性情報を説明することが求められている
- 健康被害が生じた場合、国の医薬品副作用被害救済制度の対象外となる
- 製剤によっては溶解剤で分解しにくいものがある
この説明義務は厚生労働省の医療広告ガイドラインに定められているものです。極端に安い料金設定のクリニックでは、どの製剤を使うのかを必ず確認してください。承認品を使っているかどうかを聞いて、明確に答えられないところは避けたほうが安全です。

クリニックを選ぶときの判断基準
1.診察と施術を同じ医師が行うか
カウンセリングをカウンセラーが担当し、診察は短時間で終わるという流れのところがあります。注入は解剖学的な知識と手技が結果を左右するため、実際に注入する医師が事前に顔を診てデザインを説明してくれるかを確認してください。
2.合併症への備えがあるか
ヒアルロン酸注入では、まれではあるものの血管が詰まることによる重い合併症が報告されています。万一に備えて溶解剤(ヒアルロニダーゼ)を院内に常備しているかは、確認しておきたい項目です。あわせて、施術後にトラブルが起きた場合の連絡先、夜間や休診日の対応、追加費用の有無も聞いておきましょう。
3.説明の内容が「できないこと」にも及ぶか
ヒアルロン酸で対応できる悩みと、対応が難しい悩みがあります。たるみが進んでいる状態にボリュームだけを足すと、かえって重い印象になることもあります。希望どおりにいかない可能性やデメリットを説明してくれるかは、信頼できるかどうかの分かれ目です。
4.当日契約を迫らないか
「今日だけの価格」「今決めれば◯円引き」といった案内で即決を促されるケースがあります。判断材料がそろっていない状態での契約は避け、持ち帰って検討する時間を取りましょう。契約後のトラブルについては国民生活センターが相談を受け付けています。
持ち帰った見積書や説明資料は、クリアファイルにまとめておくと落ち着いて見比べられます。
5.修正・追加の方針が明確か
左右差が気になった場合の再診や微調整に、どのくらいの費用と期間の条件がつくのかを確認してください。「◯日以内であれば無料で調整」といった方針を持つところもあれば、都度費用がかかるところもあります。

初めての人がつまずきやすいパターン
相談として挙がりやすいのが、次のようなケースです。事前に知っておくと避けやすくなります。
気になる一点だけを狙って入れてしまう
ほうれい線が気になるからほうれい線に、という発想で注入すると、その部分だけ不自然に盛り上がって見えることがあります。ほうれい線は頬のボリュームが減ることで目立つケースも多く、原因になっている部位に入れたほうが自然に整うことがあります。気になる場所と、入れるべき場所は必ずしも同じではないという前提で相談してみてください。
一度にたくさん入れてしまう
「せっかく行くのだから」と多めに入れると、腫れが引いたあとに想像と違ったときの修正が難しくなります。少なめに入れて2〜3週間後に評価し、必要なら追加するという進め方のほうが、結果として満足度は安定しやすいです。追加分の料金がどうなるかは、初回のカウンセリングで確認しておきましょう。
写真のイメージだけを持ち込む
希望のイメージを共有すること自体は有効ですが、骨格や皮膚の厚みが違えば同じ仕上がりにはなりません。写真を見せたときに「これは難しい」「ここまでなら近づけられる」と具体的に線引きしてくれる医師のほうが、結果的にすれ違いが起きにくくなります。
予定の直前に受けてしまう
ダウンタイムが短い施術ではありますが、腫れや内出血の出方には個人差があります。大事な予定の2週間前までには済ませておくと、余裕を持って調整できます。
知っておきたいリスクと合併症
多くの場合、注入部位の腫れ、赤み、内出血、痛み、しこり感といった軽い症状で経過します。ただし、頻度はごくまれでも重い合併症が存在します。
- 血管塞栓による血流障害:ヒアルロン酸が血管内に入る、あるいは血管を圧迫することで血流が妨げられ、皮膚壊死につながることがあります
- 視力障害・失明:目のまわりや鼻、眉間などの注入で報告例があります
- 感染、遅発性の炎症反応、しこりの形成
- アレルギー反応
血管の走り方には個人差があるため、経験豊富な医師でも完全に避けられるものではないとされています。だからこそ、異変が起きたときにすぐ対応できる体制があるかが重要になります。施術後に強い痛み、皮膚の色の変化、視界の異常を感じた場合は、様子を見ずにすぐ連絡してください。学会の情報は日本美容外科学会(JSAS)のサイトでも公開されています。
施術当日と、その後に備えておきたいもの
ヒアルロン酸注入は施術時間が短く、当日から日常生活に戻れることが多い施術です。ただし内出血が出た場合、隠せずに困るという声は少なくありません。予定を詰めていると、なおさら気になるものです。
備えとして、赤みや青みを補正するカラーコントロール系のコンシーラーを用意しておくと外出時の不安が軽くなります。腫れが気になる時期は、患部を圧迫しない柔らかい素材の立体マスクがあると人と会いやすくなります。また、施術後しばらくは肌をこすらないほうがよいため、アルコールフリーの低刺激化粧水と、SPF50・PA++++のノンケミカルタイプの日焼け止めに切り替えておくとケアが単純になります。

ヒアルロン酸注入のクリニック選びに関するQ&A
Q.料金が安いクリニックは避けたほうがいいですか
安いこと自体が問題なのではなく、なぜ安いのかが説明できるかが判断材料になります。仕入れ量が多い、広告費を抑えている、といった理由なら納得できます。一方、製剤名を明かさない、必要量を大幅に超える提案をしてくる、といった場合は慎重に考えたほうがよいでしょう。
Q.何ccくらい入れるのが普通ですか
部位と目的によってまったく異なるため、一般的な数字を持って行くより、診察で相談するほうが確実です。少なめから始めて、必要なら後日追加するという進め方も可能です。一度に多く入れると、修正の選択肢が減ります。
Q.持続期間が長い製剤のほうがお得ですか
年間の費用で見ると割安になる場合があります。ただし、仕上がりが気に入らなかったときに長く残るという側面もあります。初めての施術であれば、短めの製剤から試すという考え方もあります。
Q.カウンセリングは有料ですか
無料としているところが多いものの、診察料が別途かかる場合があります。予約時に確認しておくと予定が立てやすくなります。複数のクリニックで話を聞くことは問題ありません。
Q.保険は使えますか
美容目的の注入は保険適用外で、全額自己負担です。医療費控除の対象にもならないのが一般的です。
Q.気に入らなかったら元に戻せますか
ヒアルロン酸は溶解剤で分解できる場合がありますが、完全に元通りになるとは限りません。溶解にも費用とリスクがあるため、「戻せるから気軽に」と考えるのは避けたほうが安全です。
まとめ
ヒアルロン酸注入の料金はクリニックによって幅がありますが、1ccあたり3万円台から10万円程度という設定が多く、製剤の種類と必要量によって総額が決まります。広告の単価だけでは比較にならないため、「どの製剤を、どこに、何cc」の前提を揃えて総額で比べることが出発点になります。
クリニックを選ぶ際は、注入する医師が診察するか、溶解剤を常備しているか、デメリットも説明するか、当日契約を迫らないか、という4点を軸にすると判断しやすくなります。価格の安さは重要な要素ですが、それだけで決める領域ではありません。
最終的には、複数のクリニックで診察を受け、納得できる説明をしてくれた医師のもとで判断してください。


