切開を伴う美容整形を検討していると、必ず突き当たるのが「傷跡はどうなるのか」という不安です。腫れは時間が解決してくれますが、傷跡はケア次第で経過が変わると言われる部分。だからこそ、術後の過ごし方をどうすればいいのかを知っておきたい方は多いはずです。
先に結論をお伝えします。皮膚を切開した以上、傷跡そのものは残ります。ゼロにはできません。ただし、目立ちにくい状態に落ち着くかどうかには、術後数か月の過ごし方が関わってくると考えられています。とくにテープによる保護と、紫外線の遮断。この2つは形成外科の領域で長く続けられてきた基本的なケアです。
この記事では、傷跡が成熟していく経過、テープケアの具体的な方法、使われている製品のタイプ、そして日常で気をつけたい点を整理します。経過には個人差があり、ここに書いた内容は医師の指示に代わるものではありません。実際のケア方法と期間は、必ず施術を受けた医療機関の指示に従ってください。

傷跡はどう変化していくのか
美容整形に限らず、皮膚を切開した傷はすべて同じ経過をたどります。
傷は縫合されて終わりではありません。その後、数か月から1年以上かけて状態が変わっていきます。この経過を知っておくと、途中で不安になりにくくなります。
| 時期 | 傷の状態 | この時期にやること |
|---|---|---|
| 術直後〜抜糸まで | 糸がかかり、赤く腫れている | 指示された消毒・被覆。濡らさない |
| 抜糸後〜1か月 | 赤みが強い。表面はふさがっている | テープでの保護を開始。遮光 |
| 1〜3か月 | 赤みが続き、硬く盛り上がることも | テープ継続。摩擦と紫外線を避ける |
| 3〜6か月 | 徐々に赤みが引き、柔らかくなる | テープ継続。経過を医師に確認 |
| 6か月〜1年以上 | 白っぽく落ち着いてくる | 状態に応じてケアを終える |
術後3か月ごろに「赤くて硬くて、思っていたより目立つ」と不安になる方が多いのですが、この時期はまだ途中経過です。傷が最終的にどう落ち着くかは、半年から1年ほど見ないと判断できません。ここで焦って自己流のケアを始めてしまうのは避けたいところです。
赤みが強くなる、盛り上がりが増していく、かゆみや痛みが続くといった場合は、肥厚性瘢痕やケロイドへ進行している可能性があります。自己判断で様子を見続けず、施術を受けた医療機関か形成外科を受診してください。早い段階での対応が選択肢を広げます。
なぜテープを貼るのか
術後の傷跡にテープを貼るのは、見た目を隠すためではありません。目的は主に次の3つとされています。
- 張力を減らす:皮膚が引っ張られる力がかかり続けると、傷の幅が広がりやすくなります。テープで固定することでこの力を分散させます
- 摩擦や刺激から守る:衣服や手が当たる刺激を減らします
- 乾燥を防ぎ、遮光する:うるおいを保ちつつ、紫外線を物理的に遮ります
この3つのうち、見落とされやすいのが1つ目の張力です。傷跡が広がるかどうかには、その部位にかかる引っ張る力が関わっていると考えられています。表面がふさがったからもう大丈夫、と早めにテープをやめてしまうと、この保護がなくなります。
テープを貼る期間の目安
形成外科の領域では、最低3か月は続けるという案内がよく見られます。部位や傷の状態によってはさらに長く続けるよう指示される場合もあります。抜糸後すぐに始めるのが基本とされており、開始のタイミングは医師に確認してください。
抜糸後すぐに始められるよう、傷あと保護用のテープは施術前に用意しておくと慌てずに済みます。

使われているテープのタイプ
市販されているものにもいくつかタイプがあります。どれを使うかは傷の部位・状態によって変わるため、まずは医療機関で指定されたものを使うのが基本です。そのうえで、市販品に切り替える場合の選択肢を整理しておきます。
1. 傷あとケア専用のテープ
ニチバンのアトファインは、術後の傷あとケアを目的として作られたテープです。肥厚性瘢痕やケロイドの要因とされる伸展刺激・摩擦刺激・紫外線から傷あとを守ることを用途としており、SS・S・M・L・LLの5サイズが用意されているため、傷の長さに合わせて選べます。数日貼り続けたまま入浴もできる設計になっており、毎日貼り替える手間が少ないのが特徴です。製品情報はニチバンの傷あとケア専用サイトで確認できます。
正直なところ、術後は体力も気力も落ちていて、毎日のケアが面倒に感じる時期があります。交換頻度が少ないものを選ぶのは、続けるための現実的な工夫です。
2. サージカルテープ(紙テープ・不織布テープ)
3Mのマイクロポア サージカルテープのような、医療現場で広く使われている紙・不織布タイプのテープです。傷に沿って貼り、張力を減らす目的で使われます。肌色タイプ(スキントーン)を選ぶと、露出する部位でも目立ちにくくなります。ロールで販売されており、コストを抑えやすいのが利点です。
3. シリコンジェルシート
スミス・アンド・ネフューのシカケアに代表される、粘着性のあるシリコンのシートです。赤くなったり盛り上がったりした部位を保護する目的で使われます。洗って繰り返し使えるタイプが多く、盛り上がりが気になる傷に対して形成外科で長く使われてきた方法です。厚みがあるため、衣服で隠れる部位に向いています。
4. シリコンジェル(塗るタイプ)
シートを貼りにくい凹凸のある部位や、顔など目立つ場所には、塗って乾かすタイプのシリコンジェルが使われることがあります。テープが貼れない部位の選択肢として覚えておくと役立ちます。
テープを貼る向きは、傷の線に対して直角に、両側から寄せるように貼るのが基本とされています。傷と平行に貼っても張力を減らす効果は期待しにくくなります。貼り方は医療機関で実際に見せてもらうのが確実です。
テープかぶれへの対処
長期間貼り続けると、かぶれやかゆみが出ることがあります。これはよくある悩みで、続かなくなる主な理由のひとつです。
- 同じ位置に貼り続けず、少しずつずらす
- 剥がすときは皮膚を押さえ、ゆっくり寝かせるように剥がす
- 低刺激タイプのテープに変更する
- 剥がした後に白色ワセリンなどで保湿する
- 症状が強い場合は中止して受診する
かゆくて我慢できずに掻いてしまうと、傷そのものに刺激が加わります。かぶれを我慢して続けるくらいなら、いったん中止して医師に相談するほうが結果的に良い経過につながります。

紫外線対策はテープと同じくらい重要
回復途中の傷跡は、紫外線を浴びると色素沈着を起こしやすい状態にあります。せっかくテープを続けていても、遮光を怠ると色が濃く残ってしまうことがあります。
遮光も最低3か月、日差しの強い時期はそれ以上続けるよう案内されるのが一般的です。テープを貼っている間はテープ自体が遮光の役割を果たしますが、テープを外した後こそ注意が必要になります。
具体的にやること
- SPF30以上の日焼け止めを毎日使う。傷跡に直接塗ってよいかは医師に確認する
- 顔以外の部位なら、衣服やアームカバーで物理的に覆う
- 外出時はつばの広い帽子やUVカット機能のある日傘を併用する
- 塗り直し用にスティックタイプの日焼け止めを持ち歩く
- 曇りの日や車の中でも紫外線は届くため、油断しない
「日焼け止めを塗るのを忘れた日が数日あった」という程度でも、傷跡の色の残り方に差が出ることがあります。玄関に置いておく、鞄に常備するといった、忘れない仕組みを作るほうが意志の力より確実です。

日常生活で気をつけたいこと
傷を引っ張らない
大きく動かす、強くこする、伸ばすといった動作は、傷の幅が広がる要因になります。部位によっては、しばらく運動や特定の姿勢を控えるよう指示されます。
マッサージは指示があるまでしない
柔らかくするためにマッサージをするという情報を見かけますが、時期を誤ると刺激になります。開始してよいかどうかは医師の判断に従ってください。
喫煙は傷の回復に影響する
血流が悪くなることで、傷の回復に影響するとされています。術前後は控えるよう案内されることが一般的です。
栄養と睡眠
特別なサプリメントが必要というわけではありませんが、たんぱく質を含むバランスのとれた食事と十分な睡眠は、回復の土台になります。
傷跡が目立ちやすい条件を知っておく
同じ施術を受けても、傷跡の残り方には差が出ます。どんな条件で目立ちやすいのかを知っておくと、事前の相談がしやすくなります。
部位による違い
皮膚が引っ張られる力が強くかかる部位ほど、傷が広がりやすいとされています。胸元、肩、背中、関節の周りなどが挙げられます。逆にまぶたのように皮膚が薄く動きの少ない部位は、比較的落ち着きやすいと説明されることが多い部位です。部位ごとにケアの重点が変わるため、自分の施術部位について具体的に聞いておきましょう。
体質による違い
過去の傷やニキビ跡が盛り上がって残ったことがある方は、その傾向を医師に伝えてください。ケロイド体質と言われた経験がある場合、術式やケアの計画そのものが変わることがあります。カウンセリングの段階で必ず申告する情報です。
術後の過ごし方による違い
ここが唯一、自分でコントロールできる部分です。テープを続けたか、遮光を守ったか、指示された安静を守ったか。医師が担当するのは手術までで、その後の数か月は自分の担当という意識を持つと、ケアが続きやすくなります。
施術前に用意しておきたいもの
術後は買い物に出るのが億劫になります。必要なものは前もってそろえておくのが賢明です。
・指定されたテープ、または傷あとケア用テープを数週間分
・剥がした後の保湿に使う白色ワセリン
・SPF30以上の日焼け止めと、外出用の帽子や日傘
・冷却用の保冷剤(施術によっては使用可否を確認)
・清潔なガーゼや綿棒など、指示された消毒用品
テープはサイズ選びを間違えると貼りにくいので、部位に合うサイズを医療機関で確認してから買うのが確実です。
よくある質問
Q. テープはお風呂のときどうすればいいですか
製品によって扱いが異なります。貼ったまま入浴できる設計のものもあれば、都度貼り替えるものもあります。使用中の製品の説明書と、医療機関の指示を確認してください。
Q. テープを途中でやめてしまいました。今からでも意味はありますか
傷が成熟していく期間内であれば、再開する意味はあると考えられています。ただし現在の状態を見てもらう必要があるため、受診したうえで再開の可否を確認してください。
Q. 赤みが1年経っても引きません
経過には個人差がありますが、長引く場合は肥厚性瘢痕などの可能性もあります。形成外科での相談をおすすめします。傷跡の治療に関する一般的な情報は日本形成外科学会のサイトで確認できます。
Q. 傷跡を隠すメイクはしてもいいですか
傷が完全にふさがってからであれば可能な場合が多いものの、時期の判断は医師に確認してください。カバー力のあるコンシーラーや専用のカバーファンデーションが使われますが、落とすときにこすらないことが大切です。
Q. 市販のテープを自己判断で使ってもいいですか
まずは医療機関の指示を優先してください。指定がない場合や、指定品が手に入らない場合の代替を相談するという順序が安全です。
Q. かゆみが出るのは治りかけのサインですか
回復の過程でかゆみが出ることはありますが、かぶれや炎症が原因の場合もあります。掻かずに、症状が続くなら受診するのが基本です。皮膚の症状に関する一般的な情報は日本皮膚科学会のサイトにもまとめられています。
まとめ
- 切開した傷跡は残るが、術後のケアで落ち着き方に差が出ると考えられている
- 傷は数か月から1年以上かけて変化する。3か月時点の見た目で判断しない
- テープの目的は、張力を減らす・刺激から守る・遮光すること
- 傷あとケア専用テープ、サージカルテープ、シリコンジェルシート、塗るタイプのジェルなど選択肢がある
- 期間は最低3か月が目安。かぶれたら我慢せず相談する
- 紫外線対策はテープと同じくらい重要。SPF30以上の日焼け止めと物理的な遮光を併用する
美容整形の傷跡のケアは、派手さのない作業の積み重ねです。ただ、この数か月をどう過ごすかが、その後何年も付き合う見た目を左右します。必要なものは施術前に買いそろえておいて、術後は貼るだけの状態にしておくと続けやすくなります。


